氷風を彷徨う勇士(ひょうふうをさまようゆうし)

吹雪の中の思い(ふぶきのなかのおもい):絶滅した氷河の花、上には凍った露がある。孤高な勇士もかつてこの花のために身を屈したらしい。
…柔らかな手で摘まれた、永劫に凍れた氷の花。
ある人にしては、極寒が温もる抱き合いのように感じさせてくれる。

「ここの4番目の壁画はあなたのために用意されています。あなたの肖像はこの壁に永遠に残されましょう。」
「この壁画のために、みんなのために、私はいつまでもここであなたの帰りを祈っています…」

空白の壁の前で、少女は微笑みながら勇者の胸に花を飾った。
優雅で冷静な人は、たとえ死に迫ろうとも変わりはない。

古い歴史が北境の猛吹雪に覆われた。
そして雪が溶けた時、この花は散らずに咲いていた。

氷を砕く執念(こおりをくだくしゅうねん):極寒の冬を放つ鳥の羽。この猛禽が、雪原と氷峰の上で羽根を羽ばたかせた風を感じ取れるようだ。
…寒冬に属さない猛禽の羽根、冷たい感触がする。
触れると吹雪からの号泣が感じるかのようだ。

洞窟を探さず、巣を築かず、寒風に直面しても誇り高く鳴く鳥が残した羽根。
寒風に吹かれて霜雪ができたため、まるで宝石が嵌ったように見える。

冬の風が一羽の鷹からこの羽根を引きちぎった。
風に舞う羽根に霜雪が付き、どんどん重くなって地面に落ちた。

「信じています。小鳥たちがあなたの跡を追い蒼翠の夏園へ帰ってくることを」
「寒湖に駆り出されし命が、故郷を失った幼子が、あなたの跡を追い夢の巣に戻るのでしょう」

思いを託された勇者が吹雪の中で、羽根の色を見分けようと努力する。
風雪に濡れ凍れた羽根は、勇者の歩みと共に色褪せた思いのよう。

雪覆う故郷の最後(ゆきおおうこきょうのさいご):勇士の帰りを待つ故郷の人々が使っていた時計。その中を流れるのは砂ではなく、溶けない氷の屑のである。
…古い砂時計。中には極めて小さい氷晶が入っている。
たとえ最も激しい寒流でも、時間を凍らせることはできない。

「天降りの寒さは時間さえも凍らせる」
雪に葬た都の間に、こういった噂がある

勇者が寒風の壁を乗り越えた時、夜遅くに猛吹雪に見舞われた。
日光も月光も突き抜けない蒼白の風。
どんな猛吹雪でも、時間の流れを阻止することはできない。

たとえ都城が氷雪に埋められても。
たとえ英雄そのものが記憶と共に消え去っても。

霜を纏った気骨(しもをまとったきこつ):寒氷でできたコップ、冬のように堅い。かつての持ち主はそれで不凍の酒を飲んだらしい。
…寒冬の中で希望を探してくれる異邦人。
晶氷で彫刻された痛飲用の器。

盃によそわれた酒は氷剣の如く喉を刺す。
普通は遠ざける舌触りだが、沈黙の勇者はそれを気に入っている。

彼は氷のような沈黙の戦士、その身で星々よりの寒風を防ぐ。
守られることに耐えられなかった少女は、憧れの人に告げた。

「臆病と絶望があなたを押し倒して、あなたが二度と戻って来なくなっても…」
「…生き延びるです。私たちと共に滅び、冷たき意志に飲み込まれてはなりません」

別れの酒が口を潤すと、少女の濡れた瞳を避けて、
彼は終わりのない道に辿り、雪境と深淵へ旅立った。

氷雪を踏む音(ひょうせつをふむおと):氷雪を征服すると夢見る古代英雄の冠、寒い冬に直面しても怯まない勇気の証。
…英雄は僅か残された雪都の希望を背負い、救いを求める旅に出る。
冬の冠をかぶって、誇らしげに果て無き風雪へ踏み込んだ。

山城の契約をその背中に、清らかな瞳をその背中に、勇者は一度も氷の外の未知に怯えなかった。
緑で覆われる山々と、天上から降りなくなった祝福が、勇者の進む動力。

「氷封の扉を開き、深淵を回廊を下る」
「銀白の枝を折りて、彼は雪の国に希望をもたらします」

少女が歌で一族を慰めながら、彼の記憶を守った。
いつか暖かな日差しと共に彼が帰ってくると、少女は信じ切る。

しかし、雪に去った勇者が帰郷することはなく、
吹雪に巻き上げた怨みの言葉だけが、彼の逃走を訴えた…