血染めの騎士道(ちぞめのきしどう)

血染めの鉄の心(ちぞめのてつのこころ):地に黒く染められ、鋼鉄のように硬くなった花。過去の持ち主にとって、記念品の一つかもしれない。
…元々はただの白い花であり、助けられた仕女が騎士の胸の前につけたもの。
殺戮の中、何度も黒い血に染まった花は、その花弁を硬化させた。

遊侠騎士が初めて魔物を倒した時、ある仕女を危険から救った。
報酬を断った彼は、少女から真っ白な花をもらった。

「騎士の唯一の報酬は、騎士道を行くことだ」
「俺の褒章はこの花で。それでいい」

ずっと胸の前につけていた花は、幾度となく血に染められた。
騎士の銀色の兜のように、冬の夜のように黒くなり、
そして騎士の心のように、鍛え抜かれた鋼鉄のように硬い。

血染めの黒羽(ちぞめのくろばね):騎士のマントにあった羽根、大量の黒い血を浴びたせいで黒に染まった。
…偶然、血染めの騎士につた無数の黒鴉、その羽根の一本。
鴉は賢い鳥類であり、血を渇望した飼い主と共に獲物を狩る。

最後、血染めの騎士はもう分からなくなった。空気に漂う血の匂いは、敵の血なのか、それとも自分の血なのか。

彼はやっと気づいた。長年の殺し合いで、彼の騎士道は、
純白だった騎士を魔物のような悪鬼羅刹にしていた。
彼の後ろにつくのは、血の足跡を元にやってきた鴉の群れだけであった。

騎士が血に染めた時(きしがちにそめたとき):騎士が使用していた時計。中の液体は完全に固体になり、時計としての機能を失った。
…血染めの騎士は、太陽、月、星の見えない深淵の地下に足を踏み入れた。
時間を観測する唯一の道具であったが、時間そのものは意味を無くしていた。

血染めの騎士の最後の物語であり、その後、彼は身を引いた。
血に黒く染められた騎士は、もう自分の居場所がないと気づいた。
だから、崩壊した古国に入り、魔物の戦いで戦死する道を選んだ。
世界の底で、彼は古国に終末を告げた魔物の起源を理解した。

「偉大なる古国は不義の裁きを受けた」
「偉大なる古国の民は化け物だと歪曲された」
「我が騎士道、こんな不公平を断じて許さん」
「彼の名前は深淵ならば、我は深淵に忠誠を誓う」

血染めの騎士のコップ(ちぞめのきしのこっぷ):血染めの騎士が持つ金属の杯。外側は硝煙と渇いた血の影響で黒くなった。
…精巧で美しい金飾りの銀盃。英雄の功績が描かれている。
血と煙によって漆黒に染まっており、元の様子は窺えない。

猟魔騎士は、災いの狼煙を追って戦場に赴き、魔物を倒した。
だが、焼かれて崩れた瓦礫の中に救いを求める人はもういなかった。

失敗を味わった騎士は、廃墟の中にあった煙で黒く燻った盃に、
悪を根絶し、弱く貧しい人を助ける騎士道を貫くと誓った。

血染めの鉄仮面(ちぞめのてっかめん):騎士が頭を隠すための鉄仮面、仮面の下の顔は誰も知らない。
…ある名門出身の騎士が持っていた、華麗な白金色の鉄仮面。
血に染まりすぎて、元の色にはもう戻らない。

騎士が100回目の魔物を討伐し、危機から人を助けようとした時、
女性が彼の助けを拒否した。その時、血染めの騎士は気づいた。
戦いの中で、自分の血と敵の血に染められた自分の顔は、
魔物より怖くなっていた。

「この鉄仮面が私の顔になる」
「私の騎士道で守られた人に」
「私の憎い顔を見せなくて済むから」