「偽脚本家」(「にせきゃくほんか」)

本職はあっちこっちを取材すること
場所:ヴェルーリヤ・ミラージュ・祈者の劇場
関連NPC:「総監督」、ゾシモス、ダイア

ヨッ!お客さん、オレは「三日空想」の一般従業員「偽脚本家」だ。何かやって欲しいことはあるか?

①どうして「偽」?
それはいい質問だ!じっくり説明してやろう…
簡単に言うと、次にまともな作品を提出しないと、オレはクビになるからだ!
パイモン:えっ!そんなに深刻な状況なのか!ってことは…つまり、シズクちゃんたちにも厳しいルールがあるのか!?
ー①「まとも」って、たとえば?
ー②セリフの作り方のこと?

→いやいや、セリフはむしろ一番対処しやすい部分だ!
華麗な言葉を並べて、観客にインパクトを与え、そのセリフがいかにもすごそうだと思わせる…
そんなことは適当に水形幻霊に…いや、フライムだって数ヶ月訓練してあげればできることだ!
だが、素晴らしいシーンを目の前で上演するには、どうやっても作業を分担している側との連携が避けられない。それこそが「まとも」の意味するところだ!
ーー①よく分からない…
ーー②抽象的すぎる。
パイモン:その…もっとわかりやすい言葉で説明してくれないか?

→ああ、そう言われるのも予想の範囲内だ。一定の創作経験を積まないと、この話題には共感できないからな。
では、ペースを緩めてやろう――脚本家にとって相応しい書き方とは、チームの限界を知った上で、自分を抑えるってことだ。
普通のシーンを構築するだけでも、役者一人ひとりを事細かく確認して、どんな道具を使うのか確認する必要がある。
だが見ての通り、オレたちは十分な数の役者を揃えられないし、道具にも限りがある。
だから台本を書く時、絶対に派手なものは書けない。でないと、いざ演劇に落とし込んだ時、観客に変な違和感を抱かせてしまう。
これまで、そういったところを気にせず書いてきたから、非現実的な台本をいくつも作ってしまったんだ。どれも使えないだけでなく、チーム全体の足を引っ張ってしまった…
ーーー①かわいそう…
ーーー②運が悪い…
パイモン:どうしようもないなら…木の板に人の絵を書いて置いとくだけで、役者の代わりになるんじゃないか?それに道具だって、木の板に書いて表現できるだろ?
そうだ、木の板の底に車輪をつければ移動もできる!そうすればキャラを移動させたり、道具が使われたりする場面を表現できるよな。
二枚の木の板をぶつけさせて派手な効果音をつければ、戦ってるところだって表現できると思うぜ!
オイラたちが「ブラッククリスタル号と金を飲む海獣」で見た、海獣の手下と同じ原理だな。
ーーーー①すごくチープな表現方法!
ーーーー②パイモンでも実現できる!

→ダメダメ!ゾシモス先生が持ってきた本によると、そのやり方は「許されない最低な方法」で、せいぜい重要じゃない脇役にしか使えないんだ!
役者の板を置いて棒立ちさせるなんて…どんなに勢いのあるセリフだとしても、結局は動きのない言葉がそこにあるだけ…何も置かないほうがまだマシだ!
その方法では…観客の想像力を妨げるだけでなく、表現したい情景も完全には伝えらない…
だったら最初から観客に制限をかけず、言葉だけで誘導したほうがよっぽど利口なやり方だ!
……
(何やら真剣に身振りしているが、スピーカーからは音声が出ていない。)
うわっ!言葉が追いついてないぞ。録音してない言葉があるから、言いたくても言えないんだ…
パイモン:「偽脚本家」はすごくルールを大事にしているみたいだな…この話題になると、言いたいことがいっぱいありすぎて止まらなくなるのか。
ーーーーー①自分に対して厳しいのは良いこと。
ーーーーー②頑張らないよりはマシ。
パイモン:とにかく、ここでいったん止めよう。でないと、いつまでも話してそうだぞ…

→しかしオマエたちにとって、それは必ずしも難しいことではないのかもしれないな?
パイモン:確かにそうだな。よくよく考えてみれば、誰かが厳しいことを言ったからって創作することを怖がるのもなんか違うぞ。
へへっ、どうやらオイラと(旅人)は創作の才能があるみたいだな…いや、正確にはまだやってないけど、いい感じの素質を持ってるってことだ!
ところで、オイラ少し気になったんだけど、ゾシモス本人はちゃんとその本を読んだことあるのか?

②脚本家様、教えて!
→言っただろう、オレはただの一般従業員だ。「様」なんてつけて呼ばれると、なんだか皮肉っぽく聞こえる…
パイモン:おいおい!さすがにそれは敏感すぎるだろ。(旅人)は絶対にそういう意味で言ってないぞ。こいつは本心でそう思っていない限り、他人に敬称を付けたりしないからな!
→ごめんごめん、これはオレの職業病みたいなもんだ…
ゾシモス先生が言ってたけど、先生の同業者たちはセリフをたった一つ、使い方をちょっとでも間違えただけで深読みされたり、攻撃されたりしたらしい。
まあ、「ヴェルーリヤ・ミラージュ」の中にそんな厳しい観客は多分いないと思うが…
作品をつくる時は、より多くの人に見られる覚悟を持つべきで、あわよくば~なんて考えちゃいけないと、ゾシモス先生は言っていた!
ふむ、話が少し脱線したが…オレが自身に求めてることも話せたし、オマエたちへの助言にもなっただろう。
パイモン:自分への要求が厳しいな!単語ひとつにまでこだわるのか?
なら、もしオイラたちのこれまでの経験をもとに、風神とトワリンの話を劇で作ったとしたら…
「これは不敬だ!風の神をこんなにもだらしないイメージで描くなど、冒涜だ!」って文句を言う人が出てきたりするのかな…
ー①そういう時は「えへっ」で行こう。
ー②作品はエンターテイメント性が大事。

→何だと!オマエたち、まだ演劇創作を始めてもいないのに、もう「超然」の境地にまで至ったというのか?
パイモン:?
ーー?

→実はゾシモス先生が持ってきた本の中に、こんな考え方が書いてある――
「どれほど慎重に脚本を書いても、我々から見れば度が過ぎているであろう批判を浴びせてくる人がたくさん現れる」
「批判されることを恐れて、思うがままに書けないなら、それは本末転倒である…」
簡単に要約すると、正しい意見は聞き入れつつ、悪意のある攻撃はスルーする。
そういった「超然さ」が演劇の創作に役立つもので、すべての脚本家が追い求める境地でもある…言うのは簡単だが、決して容易にできることではない。
しかしオマエたちにとって、それは必ずしも難しいことではないのかもしれないな?
パイモン:確かにそうだな。よくよく考えてみれば、誰かが厳しいことを言ったからって創作することを怖がるのもなんか違うぞ。
へへっ、どうやらオイラと(旅人)は創作の才能があるみたいだな…いや、正確にはまだやってないけど、いい感じの素質を持ってるってことだ!
ところで、オイラ少し気になったんだけど、ゾシモス本人はちゃんとその本を読んだことあるのか?

③私たちが素材を提供する…
パイモン:そうだった!この前、ダイアの声がこう言ってたんだ。おまえといっぱい話して、面白い話を提供してほしい、それでおまえの演劇創作の助けになってくれって!
→おお…「総監督」はイディアからオマエたちの経歴を聞いたことがあるらしいし、確かにそれはすごく助かるな…
だが知っての通り、脚本を作るには長い時間が掛かる。オマエたちから物語を多く教わったとしても、時間が経ったら忘れてしまうんじゃないかと心配だ。
ここはやはり、オレの前にあるこの装置に録音をお願いできないか?そうすれば、いつでも聞き直して復習できるからな!
パイモン:それならオイラたち慣れてるぜ。「ダイアの三日空想」にどんな面白い素材を提供するかは、(旅人)に考えてもらおう!
→すごい!録音の尺がこんなにも長いとは!使える素材の量がオレの想像を遥かに超えてるぞ!
オマエたちがこうして物語をシェアしてくれた偉業を讃えるためにも、どっかの言葉を選び抜いてこの気持ちを伝えねば!
パイモン:へへっ、専門家のシズクちゃんが、オイラたちの素材を使ってどんな物語にアレンジするのか楽しみだぜ…
オイラ、今からもうワクワクしてきたぞ!

④どうも、お構いなく。
パイモン:そうそう、オイラたちはただ見学に来ただけだし、仕事の邪魔はしないぜ!
→二人とも、礼儀正しい上に言葉選びも的確だな。ああ、自由に見学していってくれ!